安大夫来了

 大夫(だいふ)とは中国語の口語でお医者さんの事です 因みに学校の先生は老師(らおしー)です 安大夫(あんだいふ)とは北京の 中医医院で研修をしていた私の俗称です 中国人民は人見知りをしませんから患者のじっちゃん、ばっちゃんは私に何処から来たかとか 名前はなんだとか 巻き舌の北京語で問いかけます 岡安(gang3an1)と答えるのですが 安鋼(an1gang3)と記憶されやすいのです というのも 遼寧省鞍山に鞍山鉄鋼コンビナートがあり1960年春 毛沢東がそこの活動報告に沿って(多分満足し他の手本となるよう)出した方針を安鋼憲法といい安鋼に倣えは当時はやり言葉でした 30分程の治療が終わる頃には私の名前をほぼ忘れ 安 安 うーんと出てこない 安大夫 謝々 という事で 安先生の誕生です 岡安が安岡とひっくり返り安さんと呼ばれている様なものです さて中医医院は朝7時開門8時診察開始です 早い順番を取るため小さな三輪車(鉄竜なんて立派な商標がついている)の荷台に大きな体の半身不随の爺さんを小柄なばあさんが積んで来たりその反対だったりして門前で患者がとぐろを巻いているのです 私は和平里に住んでいて混雑するバスに乗り込むのが下手だしいやだから(彼らは絶対に並ばないのです 我先にと人を押しのけ掻き退け乗り込むのです。紳士然として婦人に先を譲っていたらば朝晩バスに乗れないのです) 6時半の人の少ない時間に乗りやはり門前に7時に着きます そのうち私の顔を見覚えて 来了! 来了!(来た 来た) 安大夫来了。とささやき声が聞こえます 開門と同時に私の担当の診察室の鍵を開けるとその入り口に病歴(カルテ)を積み重ねこれで先着順位の確定です。後は患者さん同士ベンチに腰掛け談笑したり表の屋台で軽い朝食をしたりして治療を待ちます。私はまず魔法瓶2本を下げ茶飲み用の熱湯を給水所にもらいに行き 長いモップに水をつけ診療室の床を吹き掃除してその後 魔法瓶から茶碗に茶葉を落としお茶を飲みながら先生の上班(出勤)を待つというわけです

 

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